災害時の授乳~よく聞かれる質問(FAQ)

■1 ストレスでおっぱいが止まってしまいました。どうしたらいいのでしょうか?

■2 バランスの取れた栄養がとれません。母乳の質が心配です。

■3 赤ちゃんがよく泣きます。母乳がたりないのではと心配です。

■4 避難場所で周囲が気になって落ち着いて授乳できません。何かよい方法はありますか?

■5 母乳で育てています。乳児用ミルクが配布されるのですが、断ってもかまわないでしょうか?

■6 乳首をふくための清浄綿があまりありません。水でふいてもいいのでしょうか?

■7 乳房が張って痛いのですが、どうしたらいいのでしょうか?

■8 疲れて乳腺炎をおこしました。母乳はやめたほうがいいのでしょうか?

■9 卒乳したと思っていた上の子どもが、急にまた飲みたがるようになりました。どのように対応したらいいのでしょうか?

■10 妊娠中です。授乳を続けていても大丈夫でしょうか?

■11 災害時に母乳が役立つと聞きました。混合栄養ですが、母乳の量を増やすことはできますか?

■12 災害にあい、一時的に赤ちゃんと離れて暮らしていました。今は乳房はまったく張りませんし、しぼっても出ません。一緒にまた暮らせるようになったのですが、母乳育児に戻せるでしょうか?


■1■ 
ストレスでおっぱいが止まってしまいました。どうしたらいいのでしょうか

被災されたことで、通常では思いもよらないようなさまざまな困難にあわれていらっしゃることと思います。そのような中でストレスからおっぱいが止まったように感じて、途方に暮れているのですね。

緊張したり不安を感じたりしたとき、お母さんは自分の母乳が「出なくなって」しまったかのように感じることがあります。実際、極度のストレスや恐怖で一時的に母乳の出が悪くなることはあっても、それは一過性のものであることが知られています。
母乳は乳房の中でつくられ、ホルモンによって押し出されるのですが(射乳反射といいます)、極度のストレスが加わると、このホルモンが出にくくなるといわれています。ですから、お母さんがリラックスして授乳できるようになれば、もとのようにたくさん出てきます。赤ちゃんが欲しがるたびに欲しがるだけ、どんどんおっぱいを吸わせるようにしましょう。そうすれば、またもとのようになりますよ。
(『だれでもできる母乳育児』356ページより抜粋)

赤ちゃんが元気で、いつものようにウンチやオシッコが出ていれば大丈夫です。また、ストレスの多い状況の中でも、おっぱいタイムは、お母さんも子どもも心が和み、落ち着くひとときとなることでしょう。

(改訂:2019年4月3日)


■2■ 
バランスの取れた栄養がとれません。母乳の質が心配です。

バランスの取れた食事ができず、母乳に影響するのではないかと、心配なのですね。

お母さんが病気になるほどの、よほどひどい栄養失調になっていない限り、母乳には、赤ちゃんに必要な栄養が入っていると言われています。種の保存という役目のある赤ちゃんが生き残るのはとても重要なことなので、自然は母乳に含まれる栄養を保証する特別な配慮をしています。(『だれでもできる母乳育児』361ページより抜粋)

  • 母乳には、赤ちゃんが生後6ヵ月間に必要とする適切な量のカロリー、タンパク質、ビタミンなどの栄養素に加え、必要な水分もすべて含まれています。
  • 母乳は消化がよく、赤ちゃんの体に負担をかけません。
  • 母乳には多くの免疫物質が含まれ、赤ちゃんを感染から守ってくれます。

お母さんが一時的にバランスのよい食事がとれなくても、母乳には赤ちゃんに必要な栄養が含まれていますので、安心して母乳をあげてください。お母さんは、できるだけ食べ物や飲み物を確保するようにして、水分を十分に取るようにしてください。そして、赤ちゃんのためにも、できるだけ体を休めてリラックスして母乳をあげましょう。きっと、お母さんと赤ちゃんの心の栄養にもなりますよ。

(改訂:2018年3月22日)


■3■ 
赤ちゃんがよく泣きます。母乳がたりないのではと心配です。

赤ちゃんがよく泣くのは、母乳がたりないからではないかと感じられ、心配なのですね。避難場所で泣かれたりすると、周囲が気になり、どうしていいかわからなくなりますね。

授乳してから少ししかたっていないのにおっぱいを欲しがったり、泣いたりしても、このようなことはよくあることです。まず、泣いたら赤ちゃんに母乳をあげてみましょう。それでも泣くようでしたら、母乳がたりないからではなく、赤ちゃんの求めているものがほかにあるのかもしれません。おむつが汚れていないか、暑すぎたり寒すぎたりしていないか、抱っこされたいのではないか、おっぱいを吸いたいだけではないかなど、いろいろ考えられます。
(『だれでもできる母乳育児』96ページより抜粋)

母乳がたりているかどうかを知るためには、ぬれたオムツの枚数を調べます。紙おむつなら、1日に5~6枚しっかりぬれていれば大丈夫です。また、うんちもよく出ていれば十分に栄養がたりている証拠です。そして体重が増え、生き生きして知的な関心を示すようなら、安心です。(同78ページより抜粋)

具合の悪いときや、成長期のときなど、いつもより欲しがる場合もあります。赤ちゃんが欲しがるたびにひんぱんに、またゆっくりと時間をかけておっぱいを吸わせてかまいません。
赤ちゃんは、お母さんが不安に思う気持ちを敏感に感じ取って、泣いたりすることがあります。赤ちゃんは抱いていてもらったり、おっぱいを吸ったりすると安心するものです。お母さん自身もリラックスして、ゆったりした気持ちで母乳をあげてください。


■4■ 
避難場所で周囲が気になって落ち着いて授乳ができません。何かよい方法はありますか? 

避難場所ではまわりにたくさんの人がいるので、なかなか思うように授乳できず、困っていらっしゃるのですね。授乳するときは、赤ちゃんにおっぱいを含ませる最初の一瞬だけをだれにも見られないようにすればいいのです。いったんおっぱいを飲み始めれば、赤ちゃんは腕の中で寝ているようにしか見えません。

次のようなアイデアを参考になさってください。

  • 服装は上下に分かれた洋服がいいでしょう。
  • たとえば、ゆったりとしたセーターやブラウスに、スカート、ジーンズ、スラックスを着ておくと、ボタンをはずさないでそのまま授乳できます。
  • ブラウスのボタンをはずすときには上からはずさずに、下からはずして上のほうは留めたままにしておいたほうが、ほかの人に気づかれにくいでしょう。
  • 毛布やバスタオル、ショールなどを肩から胸にかけ、赤ちゃんをすっぽり覆うと授乳していることは、まわりからわからないでしょう。
    (『だれでもできる母乳育児』35~36、91~92ページより抜粋)
  • 下に着るTシャツや肌着の胸の部分に2つ穴をあけておくと、授乳時に胸元が見えにくいですしお母さんが寒くありません。

■5■ 母乳で育てています。乳児用ミルクが配布されるのですが、断ってもかまわないでしょうか?

母乳でお子さんを育てていても乳児用ミルクをすすめられると断るのも気が重いし、とりあえずもらったほうがいいのかしらと迷っていらっしゃるのですね。

母乳には赤ちゃんに必要な栄養・水分が入っています。さらに、母乳の中の感染防御因子が、 非常事態で流行する可能性のある下痢や呼吸器感染から赤ちゃんを守ります。

母乳の分泌を維持するには、何度も吸わせ続けることがコツです。
どうぞ安心して母乳育児を続けてください。母乳育児をすることで、お母さんと赤ちゃんは癒され、落ち着くことができます。
(LLL日本『災害時の「乳幼児の栄養と授乳」情報シート集』25ページより)

安全に赤ちゃんに粉ミルクを与えるためには、哺乳びんなどを清潔にするための豊富な水と、ミルクを殺菌し溶かすための70℃以上のお湯が必要です。母乳で育つ赤ちゃんが今までと変わらずに母乳を飲み続けることは、ミルクが必要な赤ちゃんに必要な物資が届くことにつながります。

ミルクをすすめられたときは、「ご親切にありがとうございます」などの言葉を添えて、「自分は使わないので、ミルクを必要としている子どもに優先的に届けてください」と伝えてはいかがでしょうか。

母乳の分泌量が心配な場合は■11■災害時に母乳が役立つと聞きました。混合栄養ですが、母乳の量を増やすことはできますか?もご覧ください。

(改訂:2019年4月3日, 2018年3月22日)


■6■ 
乳首(ちくび)をふくための清浄綿があまりありません。水でふいてもいいのでしょうか?

授乳のために乳首(ちくび)をふくことが必要だと思われているにもかかわらず、災害にあわれ清浄綿が手に入りにくくなり、ふくことができなくなりそうで不安に思っていらっしゃるのですね。このような状況下にもあっても、

赤ちゃんのために最善のことをしたいと思うお母さんのあたたかい気持ちが伝わってきます。

乳首のまわりにあるモントゴメリー腺から、肌を保護し細菌の増殖を防ぐ分泌物が出ていますので、実は乳首を清浄綿などでふく必要はありません。基本的には水でふく必要もありません。
シャワーを浴びる機会があったときに湯か水で洗えば十分です。石けんは、その自然の潤滑油を洗い流して乾燥させてしまいますから、使わないようにしましょう。手が洗えない状態で指が汚れているのが気になる場合でも、乳首乳輪(乳首の周りの褐色の部分)さえさわらなければ、心配ありません。

(『だれでもできる母乳育児』31、56~57ページより抜粋)
(改訂:2019年4月3日)


■7■ 
乳房が張って痛いのですが、どうしたらいいのでしょうか?

避難所生活をされていたり、あるいはご自宅にいらっしゃっても後片付けに追われていたりして思うように授乳ができず、乳房が張ってきて痛みもあり、心配されているのですね。 このような状況下では、授乳に時間をかけることがなかなかできないため、授乳間隔があきすぎてしまったことが原因の1つになることがあります。

乳房に痛いところがある、赤くなっているところがある、しこって痛いところがあるなどの症状がある場合、一部の乳管がつまって母乳が流れにくくなっていると考えられます。困難な状況が続き、疲れていらっしゃるのでしょう。働きすぎや疲れているサインですので、赤ちゃんと一緒に横になるようにして可能な限り身体を休めるのが回復への一歩です。

痛みのあるほうの乳房から赤ちゃんに飲ませます。つまっているほうに赤ちゃんのあごがくるような方向で飲ませてみましょう。

避難場所にいる場合はなかなかできないかもしれませんが、寝たままで飲ませる、座る場所を変えてみる、脇に抱いて飲ませるなど、赤ちゃんの位置をいろいろ変えてみる方法もあります。
そのときはお母さんと赤ちゃんの体が平行に向き合っているか、赤ちゃんが首をひねったり、頭を後ろにそらしたりして乳頭だけを吸うかたちになっていないか注意してください。乳輪の部分をできるだけ深く含ませると、赤ちゃんは母乳を効果的に飲むことができます。(『だれでもできる母乳育児』128~130ページより抜粋 一部改変)

張って痛いときはなるべくひんぱんに、赤ちゃんがほしがるときにはいつでも授乳しましょう。

乳房が張りすぎていると、赤ちゃんが適切に乳房に吸いつけないのでトラブルの原因となることがあります。最初に手でしぼって張りをやわらげておくといいかもしれません。 (同53~54ページより抜粋)

(改訂:2024年4月2日, 2018年3月22日)


■8■ 
疲れて乳腺炎をおこしました。母乳はやめたほうがいいのでしょうか?

被災されたあとの毎日はさぞかしたいへんなことでしょう。この状況下で疲れて乳腺炎にかかったのではないか、そのような母乳を飲ませ続けていいのかと心配なさっているのですね。

乳房に痛いところがある、赤くなっているところがある、しこって痛いところがある、などの症状がある場合、乳管がつまって母乳が流れにくくなっていると考えられます。この症状に加えて、発熱や流感のときに感じるような症状(疲労感・けん怠感など)があった場合は乳腺炎です。時には家族のだれかが風邪やインフルエンザにかかったときに、乳腺炎にかかる場合もあります。乳腺炎だからといって、授乳をやめることはありません。乳腺炎にかかったらすぐに治療を始める必要があります。可能な限り休息を取る、赤ちゃんにどんどんおっぱいを飲んでもらう。この原則をすぐ実行すると、特別に薬を飲まなくても乳腺炎は治る場合が多いです。
(『だれでもできる母乳育児』128、131ページより抜粋)
(原則の詳細は「■7■乳房が張って痛いのですが、どうしたらいいのでしょうか?」の項をご覧ください)

24時間たっても熱が引かないときや具合がよくならないときは、医師の診察を受ける必要
があります。薬の処方を受け飲み始めても、休息を取ることと、赤ちゃんにどんどん授乳することは続けてください。研究の結果、乳房をたびたび吸ってもらって循環をよくしたほうが治りやすいこと、乳腺炎にかかっているおさんの母乳を飲んでも赤ちゃんには何ら害のないことがわかっています。(同131ページより抜粋)

(改訂:2024年4月2日, 2019年4月3日)


■9■ 
卒乳したと思っていた上の子どもが、急にまた飲みたがるようになりました。どのように対応したらいいのでしょうか?

もう母乳を卒業したと思っていたお子さんがまたおっぱいを飲むようになって戸惑っておられるのですね。普段の生活の中でも「きょうだい同時期授乳」についての質問がよく聞かれますが、被災され不安になった上のお子さんがお母さんに安心を求めているのかもしれませんね。

少し大きくなった子がおっぱいを飲むことにも、いろいろいいことがあります。たとえば、子どもが疲れすぎたり、むずがったりしているときに、おっぱいを飲ませるとすっと落ち着いて、眠ってくれます。けがをしたときなど、おっぱいに代わる慰めはありません。
(『だれでもできる母乳育児』258ページより)

日常とは異なる今の生活の中で、上のお子さんもおっぱいで心が安らいでいるのかもしれませんね。お子さんが大きくなっても、おっぱいが必要なのであれば、お母さんがそれに応じようとすることは自然なことだと思います。

(改訂:2019年4月3日)


■10■ 
妊娠中です。授乳を続けていても大丈夫でしょうか?

次のお子さんを妊娠されたので授乳を続けても大丈夫かどうか、ご心配なのですね。おなかの赤ちゃんも今育てているお子さんも、どちらも大切に思うお気持ちが伝わってきます。

ラ・レーチェ・リーグの発行する『だれでもできる母乳育児』261ページでは、

  • 妊娠したからといって、すぐさま乳離れをさせる必要はありません」
  • 妊娠中の授乳は流産を招くのではないかという不安もあるでしょう。しかし、母乳育児が流産を引きおこすという確証はありません。

ということをお伝えしています。

ただし、以下の症状があるときには医学的な理由から妊娠中の授乳は困難です。

  1. 乳首を吸わせるとおなかに強い張りを感じる。
  2. 出血している。
  3. 早産の経験がある。
  4. お母さん自身の体重が妊娠中に減ってきている。

(ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル発行『BREASTFEEDING ANSWER BOOK』より)

妊娠中に授乳を続けるのがつらくなる場合もありますね。よく考えてみてそれでも妊娠中は授乳をやめたいと思われるのであれば、できるだけゆっくりと愛情をかけて乳離れさせていくという方法もあります。

(改訂:2019年4月3日)


■11■災害時に母乳が役立つと聞きました。混合栄養ですが、母乳の量を増やすことはできますか?

たいへんな災害が起き、避難所などいつもと違う環境のなかでの生活をされ、食事をするのさえもやっとのことと思います。多くの不便に耐えながら赤ちゃんと一緒の生活で、配給を待たなくても与えられる母乳の分泌をできるだけ増やしたいという思いがあるのですね。

今から母乳の量を増やしたい場合は、次のような方法があります。

  1. まずは母乳がたりているかどうかの目安を確認します。 (母乳がたりているかどうかの目安は「■3■赤ちゃんがよく泣きます。母乳がたりないのではと心配です」 をご覧ください)
  2. 赤ちゃんが欲しがるたびに欲しがるだけ授乳します。
  3. 授乳の方法を振り返ります
    • 赤ちゃんが首をねじる必要がないように、赤ちゃんの体の前面をすべてお母さんに密着させて抱く。
    • 赤ちゃんが大きな口を開けたときには、赤ちゃんの頭はやや後ろに傾いて、乳首の高さに鼻が来ている。
    • その状態で乳房に向かって近づくと、あごが先に乳房につく。
    • そうすることで口の上側よりも下あご*で乳房の多くを口に含むことができる。
    • 赤ちゃんを乳房に抱き寄せるときは、乳首が赤ちゃんの口の中で上あご**に向かうようにする。下あご*:下顎(かがく)上あご**:口蓋(こうがい)
      (ラ・レーチェ・リーグ日本発行『赤ちゃんは十分に母乳を飲んでいるかしら』参照)
  4. 1日にぬれるおむつの枚数を数えます。おむつが十分ぬれていて、うんちもたくさん出ているようなら、思っているほど、たりないわけではないのかもしれません。その場合は、粉ミルクを急にやめないで徐々に減らしていき、どんどんおっぱいを吸わせましょう。
  5. おっぱいを十分吸わせてももっと欲しがるときは、コップで粉ミルクをたします。哺乳びんの消毒がむずかしいときは、特に、哺乳びんを使わずにすぐに洗える容器や使い捨ての容器を使ったほうがいいでしょう。赤ちゃんの吸いたい欲求には、哺乳びんやおしゃぶりではなく、母乳を与えるようにすると、赤ちゃんがより多くの母乳を飲むため、分泌がより増える助けになります。
  6. 乳首への刺激がたりないときは手でしぼります。
  7. たくさんスキンシップを取って、赤ちゃんとできるだけゆったりと過ごせるようにしましょう。

粉ミルクをあげるときは

    • 粉ミルクは70℃以上で調乳する(一度沸騰させて熱いうちに溶かす)ことができれば、細菌を死滅させることができます。
    • 調乳後の粉ミルクも乳児用調整液体ミルクも2時間以内に飲まなかったら破棄します。使わなかったミルクを、大きな子どもや大人がすぐに飲むのはかまいません。

このようなたいへんな状況であるにもかかわらず、何よりも大切なことは、お母さんがずっとされてきた母と子のふれあい(マザリング)そのものです。被災され、難しい状況のときもあるかもしれませんが、リラックスすることが大切です。多くの場合はリラックスして赤ちゃんにどんどん吸わせれば母乳の量が増えていくものです。(『だれでもできる母乳育児』153ページより抜粋)

今は日常と違って特別な状況下で生活をされているので、リラックスすることが難しいと感じられるかもしれませんね。リラックスの方法にはさまざまなものがあります。自分がいらいらしたり、緊張していたりするときは、1分でいいですから深呼吸してみましょう。軽く体操をしてもいいでしょう。緊張した筋肉がほぐれ、血液の循環もよくなりますよ。赤ちゃんと一緒に体操をするのも楽しいですね。天気がよければ、赤ちゃんと散歩してみましょう。(『だれでもできる母乳育児』89ページより抜粋)

中には非常にまれですが、さまざまな理由で母乳の量が赤ちゃんの必要とする量まで増えないお母さんもいます。母乳を少しでもあげることで、それだけ赤ちゃんは感染症にかかりにくくなります。ミルクだけにする必要はありません。乳児用ミルク、あるいは月齢が進んでからは離乳食を与えながら、母乳を続けることができます。

(改訂:2024年4月2日, 2019年4月3日, 2018年3月22日)


■12■
災害にあい一時的に、赤ちゃんと離れて暮らしていました。今は乳房はまったく張りませんし、しぼっても出ません。一緒にまた暮らせるようになったのですが、母乳育児に戻せるでしょうか?

赤ちゃんと一緒に暮らせるようになり、また母乳をあげることができないかしらと希望を抱いていらっしゃるのですね。母乳を少しでもあげることで、それだけ赤ちゃんは感染症にかかりにくくなります。

母乳復帰(母乳の分泌を再開すること)を望む場合は、基本的には赤ちゃんにひんぱんに授乳することがいちばん大切です。吸いつくのが難しいときは、手で3~5分、両方の乳房を1日に数回しぼります。そして1日にしぼる回数を徐々に増やしていきます。はじめは数滴出るか出ないかの程度でしょうが、くじけずしんぼう強く続けていると2~6週間で、母乳がつくられるようになります。赤ちゃんが直接吸いついて飲むようになれば、量も増えていきます。
しばらくは乳児用ミルクを飲ませる必要があると思いますが、まず最初に自分の乳首に吸いつかせてから、できるだけ哺乳びんをやめてスプーン、コップなどで補足するようにしましょう。
(『だれでもできる母乳育児』322ページより抜粋)

『カップを使った授乳方法』『災害時の乳幼児栄養に関する指針 改訂版』には、コップなどを使ってしぼった母乳や乳児用ミルクをたす方法が書かれています。

(改訂:2019年4月3日)


作成:「災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会」


■ 参考資料 ■

●『だれでもできる母乳育児』 (ラ・レーチェ・リーグ・インターナショナル著 メディカ出版)


「災害時の母と子の育児支援 共同特別委員会」は、NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会、ラ・レーチェ・リーグ(LLL)日本、母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan)の3つのNGO団体が共同で運営しています。

NPO法人日本ラクテーション・コンサルタント協会(JALC):母乳育児援助のための専門的な知識と技術を持つ「国際認定ラクテーション・コンサルタント(IBCLC)」が運営している、母乳育児支援にかかわる専門職のための団体です。
(https://jalc-net.jp/)

★NPO法人ラ・レーチェ・リーグ(LLL)日本:母乳で育てたいお母さんのための集いを開き、相談活動などをおこなっている、母親によるボランティア団体です。世界66ヵ国に活動グループがあります。(https://llljapan.org/)

母乳育児支援ネットワーク(BSNJapan) :ユニセフや国連の協議団体であるWABA(世界母乳育児行動連盟)や
IBFAN(乳児用食品国際ネットワーク)といった団体と連携をとって広く母乳育児に関する情報の提供などをおこなっています。(https://bonyuikuji.net/)