3月国会会議録(参議院東日本大震災復興特別委員会)より。 ストレスで母乳が出なくなるわけではないという、東日本大震災の具体的事例
一部書き抜きます。
伊藤議員質問
「…まず、母乳には免疫があって、それだけ飲んでいれば赤ちゃんの命が助かること、母乳分泌の仕組みとして、吸わせれば吸わせるだけつくられるので、とにかく欲しがるときに欲しがるだけ吸わせるようにするのが大切なこと、母親の栄養が足りなくても母乳には赤ちゃんに十分な栄養が含まれていること、ストレスで一時出なくなったように思っても母乳が干上がることはないことなどの情報を母親に提供することが必要と考えております。つまり、母乳で育てることは、それ自体、赤ちゃんにとっては十分な防災活動だと言えます。
ここで、ストレスで母乳が出なくなると思われていることもあるんですけれども、そうではないというエピソードを、私自身も驚いたことがあるので、少し紹介をさせていただきます。
東日本大震災のときに、石巻日赤病院に支援に行かれた日赤医療センターの看護師長さんからお聞きした話です。それまでは、この病院では母子別室で授乳室で授乳をするシステムで、授乳室にはミルクを置いていたけれども、震災後、正常時*(ママ:正常児のこと)は全て母子同室でミルク缶をなくした、とにかく母子が一緒にいるように、赤ちゃんを守れるのはお母さんだけだということでずっとだっこをしてもらっていたと。この石巻の病院では、四月までの分娩数が八十一件、一〇〇%が母乳だった*ということで、長期間停電と断水だったけれども赤ちゃんは大丈夫だったということです。
また、ほかの助産師さんからは、震災の前年に乳腺炎で乳房を切開したお母さんが、赤ちゃんがいるから避難所には行けなくて、車の中でおっぱいを飲ませていました。乳腺炎の際におっぱいを止めていなくてよかった、おっぱいがあってよかったとおっしゃっていたのを聞いて、それを励みにして助産師さんたちが、とにかくおっぱいが出ればミルクの心配がないと必死に母乳育児の支援をしたこと、そのためか、ここの病院でも震災があった三月の完全母乳率が九〇%を超えたこと、また、他の宮城県内の病院でも、ふだんは混合栄養だったけれども、頻回授乳をして震災直後は母乳率が一〇〇%になったということもお聞きをしました。
災害が起こってから母乳の有用性などの情報を提供することも大切ではありますけれども、平常時から母乳育児に対する理解を深め、母乳育児をしている母親を支援していくことが防災対策にもつながると考えますけれども、高木副大臣、いかがでしょうか。」
(注:NICUなどの入院が不要な正常児、つまり正期産で生まれた健康な赤ちゃんに限って100%だということで、医学的に乳児用ミルクが必要だった、正常児ではない赤ちゃんは含まれていません)
厚労副大臣
「お答えいたします。母乳の重要性について御指摘をいただきました。こうした災害時におきましても母乳で育てることを希望されるお母さん方が無理せず自然に母乳育児に取り組めるようにするためには、やはり御指摘のとおり、平常時から母乳育児に対する理解を深めることが重要であると考えております。」
(中略)伊藤議員
「…先ほど、今マニュアル化も進めているということでお話がありましたけれども、実際に地方自治体における避難所のマニュアルの中では、母乳はストレスで止まってしまうので備蓄が必要だというような観点で書かれているというようなものも見受けられるところであります。私自身、母乳がストレスで止まってしまうんじゃないかというようなところは、これまでそういうふうに思っていたところもありましたけれども、決してそうではないということも教えていただいたところでもあります。
それが分かるだけでも、お母さんにとっては、自分で子供を守ることができる、また、自分しか守ることができないんだという思いで取り組むことができると思いますので、是非そのような、母子が離れない、安心できる環境があれば分泌は妨げないこと、また、母乳を続けることが母子の命を守ることにつながることなどもマニュアルに記載していくなど、とにかく母子が離れない支援をしていただきたいという思いでいっぱいです。これからも、今おっしゃっていただいた厚労省また内閣府におかれましても、母乳育児を支援していく方向で取組を進めていただきたいというふうに考えております。」
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https://kokkai.ndl.go.jp/minutes/api/v1/detailPDF/img/119614858X00320180322
母と子の育児支援ネットワークとその構成団体は不偏不党で活動をしています。
平常時災害時の乳児栄養について理解してくださるすべてのかたにこれからも情報提供をしていきたいと思っています。